精神的に被害を受ける「モラハラ」と「精神的DV」。どちらも被害者の心を蝕ませる行為ですが、このふたつの細かな違いをご存知ですか?
モラハラと精神的DVの違いは、暴言の内容に違いがあります。
今回は、モラハラと精神的DVの違いについてを詳しく深堀りしていきます。
「精神的な暴力は肉体的な暴力と同じ程度に、場合によっては肉体的な暴力以上に人を傷つけるもので犯罪である」
引用:マリー=フランス・イルゴイエンヌ(モラハラの提唱者)
モラハラと精神的DVの違い

モラハラと精神的DV、この二つは似て非なるものです。まずはモラハラと精神的DVの違いから確認し、モラハラとDVについて詳しく解説していきます。
1. 主体が異なる
言葉の暴力を使うとき、モラハラはその主体を「世間」「常識」「道徳的な見地」におきます。
一方、精神的DVでは、その主体は「加害者本人」。
具体的な例からモラハラと精神的DVの違いを見てみましょう。
モラハラの場合
「常識がない」「人としてだめだ」「そんなことも分からないのか」
精神的DVの場合
「お前はバカだ」「クズ」「○ね」「俺の言うことが聞けないのか」「俺が稼いでるから飯が食えるんだろ」
モラハラは、(本当は被害者が常識的であっても)世間一般からどれだけずれているかということを指摘してくるのに対し、精神的DVでは、俺様主義で支配してくるという主体の違いがあります。
2. 言葉以外の行為の有無
モラハラは基本的に言葉や態度で被害者を精神的に追い詰めます。一方、精神的DVでは、被害者のものを壊したり、捨てるなどといった行為でも精神的に追い詰めることもあります。
3. 対象範囲の違い
モラハラは、夫婦間だけでなく、会社の上司と部下などでも起こります。
精神的DVを含む、ドメスティックバイオレンスはあくまでも「ドメスティック(=家庭内)」で起こるものとされています。
モラハラとは
モラハラとは「モラル・ハラスメント」の略で、「モラル(道徳)」を振りかざし、自分と世間一般の常識が正しく、相手が悪いといった考えかたから振るわれる精神的暴力です。
精神的DVとは
DVとは「ドメスティック・バイオレンス」の略で、夫婦をはじめ近親者間の暴力全般のことを差します。
そのなかでも、精神的な被害を受けるものが「精神的DV」。DVは大きくわけて5つのDVに分類されます。
DVの分類
- 身体的DV (殴る、蹴る、叩くなどの暴力を行うなど)
- 精神的DV (暴言、侮辱、脅す、無視をするなど)
- 経済的DV (生活費を十分に与えない、過度な節約を強いるなど)
- 社会的DV (人間関係の監視・制限、外出の制限、働くことを認めない)
- 性的DV (性的な嫌がらせ、避妊の拒否、堕胎の強要など)
精神的DV、経済的DV、社会的DVといった、体に傷や怪我が残らない暴力もDVに含まれており、目に見えない暴力である「モラハラ」の一種。
大声で怒鳴る、命令口調で話す、脅す、侮辱をする、悪口をいう、無視をする、人前でけなす、人格否定をするなどで相手に精神的な苦痛を与えます。
被害者自身は「罵倒されている、暴言をいわれている」ことがハッキリと分かるため、自分がDV被害者である自覚を持ちやすいのが特徴です。
モラハラと精神的DV、どちらの方が被害が大きいということはない

モラハラと精神的DVはどちらのほうが被害が大きいとか、どちらなら許せるということはありません。どちらも、被害者の心を深く傷つける暴力行為。
加害者の多くはモラハラと精神的DVを両方使って責めてくる場合もあり、完全に切り離して考えられるものでもありません。
夫婦間での精神的暴力があった場合に、精神的DVやモラハラは「証明することが難しい」という問題がありますよね。
精神的DVやモラハラは証明がしにくい
身体的な暴力を伴わない精神的DVやモラハラは、証拠の証明がしづらいために離婚原因として認められにくいと言われています。
精神的DVやモラハラをする多くの加害者は外面が良く、どちらかが嘘を付いている可能性も否定できません。心情的な部分に頼る部分が多いので法律で守りにくいものとなっているのが現状。
嫌な記憶を思い出して被害者が二次的に追い詰められる可能性もあり、難しい問題ですよね。日々のやりとりを日記やボイスレコーダーでできるだけ記録をしておきましょう。
モラハラか精神的DVかより大切なこと
何より大切なのは、言葉の定義ではなく「あなたが辛い思いをしている」という事実。あなたが苦しんでいるのなら、何かしらの対策をしていかなくてはなりません。
モラハラや精神的DVの被害はとても特殊な状況であり、当事者でないとその辛さがわからない部分があります。
モラハラなのか精神的DVなのか。
どちらも相手の精神を傷つけているのですから、同じことで許される行為ではありません。