モラハラは「モラル・ハラスメント」の略で、言葉や態度で嫌がらせをしたり、圧力をかけたりすることをさします。身体にケガをさせるような暴力ではなく、あくまでも精神的暴力であることが特徴。
令和元年度の司法統計によると「精神的な虐待」は、女性の離婚理由の3位にあがるほど大きな問題となっています。
離婚理由(女性) | 件数 | |
---|---|---|
1位 | 性格があわない | 17,242 |
2位 | 生活費を渡さない | 12,943 |
3位 | 精神的に虐待する | 11,094 |
参考:裁判所│令和元年度 司法統計19婚姻関係事件数 申立ての動機別申立人別 全家庭裁判所
この記事では、モラハラ夫の特徴やモラハラになる原因、夫婦げんかとモラハラの違いなどを紹介しています。
夫のモラハラに悩んでいる方は、ぜひ最後までお読みください。モラハラを治すことは難しいですが、対処法を知ることで被害を回避できるかもしれません。
モラハラ夫の特徴

モラハラ夫の特徴やよくある言動から、あなたの夫がいくつ当てはまるかをチェックしてみましょう。
モラハラ夫の特徴
- 周囲からは「優しくて良い夫」と思われている
- 絶対に謝らない
- 間違いや失敗を人のせいにする
- 少しでも気に入らないと無視をする
- 自分は他人よりも優れていると思っている
- 他人に厳しく自分に甘い
- 反論すれば「~したお前が悪い」と妻のせいにしてくる
- 妻が楽しそうにしているのが気に入らない
- 妻や妻の家族、友人に対して人格否定やバカにするようなことを言う
- 人前でバカにしたりけなすような発言をする
- 嫉妬や束縛・依存が激しい
- 大声で怒鳴ったり、大きな物音を出すなど威圧的な態度をとる
- 子どもや大切なものを人質に脅したり、強要したりする
- 共感性がない
- 仕事を辞めさせたり、家族や友人との交友を制限する
当てはまった数が多ければ多いほど、モラハラ夫の可能性は高いです。日常的に行われているかも「モラハラ夫かどうかを見極めるポイント」になります。
モラハラ夫になる原因

多くの場合、出会った当初はモラハラをする人ではなかったと思います。モラハラ人間だったことが最初からわかっていたら、そもそも結婚なんてしませんよね。
モラハラ夫は外面が良いのも特徴で、結婚や出産などをきっかけにその特性を現してくることが多い。モラハラ夫になる4つの原因を見ていきましょう。
幼少期の家庭環境
モラハラになる原因の1つには、幼少期に過ごした家庭環境に要因があるといわれています。
親の過干渉・過保護
幼少期から大人になってもずっと、進路や就職、付き合う友達など、子どものすることやることすべてに口を出し、親の思い通りにさせるような家庭があります。
すると、子どもは次第に「親の意見 = 自分の意見」と勘違いするようになります。
親から人生のレールを強制され、自己肯定感を育てることができなくなってしまうために、大人になりモラハラをして自分が相手より優位に立とうとしてしまう心理が働くようになります。
子どもからしてみても、親の言うとおりにしていれば、外で誰かに迷惑をかけたとしても「自分は悪くない」と責任転嫁が生まれます。

親の過保護・過干渉により、子どもは自分の意思を持たなくなります。「自分が一番だ」ということが当たり前になり、他人を尊重できなくなっていくのです。
親から過剰な期待と干渉を受けながら育った人は、大人になってモラハラをしてしまう傾向にあります。
家庭内暴力
幼少期や多感な時期にネグレクトやDV被害を受けていると、人の気持ちが分からなくなったり、愛されることを知らずに大人になってしまいます。
自分に自信が持てず、常に人の顔色を気にしながら、劣等感を抱くことが多いといいます。表面的には良い夫であっても「劣等感を優越感に変えるため」に、妻にモラハラをすることで精神状態を保とうとするのです。
子どもが見ている前で夫婦間で暴力をふるうことは子どもへの心理的虐待となります。これを面前DVといいます。
親もモラハラ体質だった
幼少期に親からモラハラを受け、否定されつづけてきた人は、パートナーにモラハラをしてしまう傾向にあります。親が、外面と内面を使い分ける様子を見ていくうちに、同じように使い分けて家庭内でモラハラをする大人に成長していくのです。
つづいて、幼少期の家庭環境のほかにもモラハラになる原因を見ていきましょう。
仕事でのストレス
モラハラをする人は、外面が良い。職場は「外面」で過ごしているため、ストレスを吐き出すために家庭内でモラハラが出現してしまいます。
精神障害、発達障害
ひと昔前にはあまり一般的ではなかった「発達障害」。最近では、発達障害がモラハラの原因の1つであると考えられており、精神障害の一種とされています。
性格的なもの
自信過剰や心配性な性格が、モラハラになっているという場合もあります。幼いころに甘やかされて育つと「自分は特別だ」と勘違いして成長し、自信過剰な性格の大人になりやすいです。
このような人は、家庭でどんなにひどいモラハラを行っていても、家庭内と外での態度がまったく違うため周りの人にモラハラ被害が気づかれにくいという厄介な点があります。
夫婦げんかとモラハラの違い

どんな夫婦でも、意見の違いや多少のケンカはあります。しかし、単なる夫婦げんかとモラハラは全く別物。
ここでは、大きな2つの違いを紹介します。
夫婦の関係が対等でない
夫婦喧嘩とモラハラとの大きな違いは、夫婦関係が対等ではないことです。
- 支配的な言い方をする
- 威圧的な態度で脅す
- 思い通りに操ろうとする
お互いに意見を言い合うどころか、上記のような夫の態度に恐怖を感じ、萎縮して言い返せないようであれば夫婦喧嘩の範囲を超えモラハラに該当します。
客観的に考えて夫に非があるような場合でも、人格や価値観・家族などを否定され、謝るまで無視されたり許してもらえないようなケースも同様です。
怒りの表現が度を超えている
度を超えた怒りを表現するのも、モラハラと夫婦げんかの違いです。
夫婦げんか
「夫が昔から大切にしているものを誤って壊してしまったために、1週間冷たい態度を取られた」などはまだ「けんか」の範囲内かもしれません。
モラハラ
「自宅で食事中に手が滑ってしまい箸を落としたことに対し、長々と説教され1週間無視される」のは「モラハラ」と言えるでしょう。
多くの人であれば、怒らない事象に対し度を超えて怒ってきたり、人格を否定したりするような行為はモラハラに該当します。
矛盾したルールを押し付けてくる
モラハラ夫は「自分は良いけど、妻はダメ」という矛盾ルールが当たり前に行われます。
夫と妻で守るべきルールが違う理由は「妻がいたらないから」「嫁に来た立場だから」「男と女では意味が違う」などと言った意味不明なことで正当化されているのです。
モラハラ夫への効果的な対応

モラハラ被害が長期に渡って続くと、うつ病など身体に不調をきたしてしまう場合があります。また、子どもへの影響も気になりますよね。
モラハラ夫から受ける苦痛を減らす、効果的な対応法をご紹介します。
モラハラをさせない環境を作る
モラハラ夫は、基本的に家庭内でしかモラハラをしません。
モラハラ夫は外面が良い。これは、自分に自信がなく外では他人に「良い人に思われたい」という心理からきています。なるべくモラハラをさせない環境をつくりましょう。
言いなりにならない

モラハラ夫の妻は、「良い妻」であろうと完璧に頑張ってしまうタイプが多いです。言われたことを完璧にやっても報われないどころか、さらにモラを加速させる原因に。
モラハラ夫から無理を要求をされても、はっきり断りましょう。
そのせいで何かを言われるようなら「無理なものは無理」「文句があるなら自分でやって」と毅然とした態度で伝えることが大切です。
自分に非がなければ謝らない
その場のモラハラを収めようと、不必要に謝る必要はありません。
自分に非がない場合は、謝らない。
「モラハラをさせない自分になる」ことが大切です。
別居をする
夫によるモラハラ期間が長い場合、妻も正常な判断ができない可能性もあります。可能なら、離れるのが一番でしょう。
モラハラ夫にとって妻は遠慮のいらない相手であり、すべてをぶちまけられる相手です。そういった存在がいなくなった場合の「存在のありがたさ」を感じさせるという意味でも、有効な手段の一つでしょう。
離婚をする
冒頭でも記載したとおり「精神的な虐待」は離婚理由の3位になるほど大変な苦痛です。夫に気を遣うあまり、うつ病になってしまったり、心身に影響を及ぼしてしまっては元も子もありません。
自分の幸せを尊重するための一つの選択です。
夫のモラハラは治るのか

夫のモラハラは治せるのか…永遠の命題。治る可能性はありますが、見込みはほぼありません。
モラ夫は、モラハラをすることで自分を守り、正当化しています。そのため、モラハラ夫がモラハラを治すことにメリットを感じられません。モラハラを治したいと思える環境になれば、治る可能性が見えてくるのかもしれません。
カウンセリングに行く
モラハラの自覚を持たせる、または周囲を巻き込んで危機感を持ってもらうために、カウンセリングに連れて行くのもひとつ。
モラハラに詳しいカウンセラーの力を借りて、モラハラのない夫婦の健全なあり方を理解させることができるかもしれません。
努力してカウンセリングに連れて行っても、カウンセラーを論破して満足するといったケースも。
モラハラに無関心を貫く

モラハラを治す本人と同時に、被害者である妻にもある程度の努力は必要です。
モラハラ夫は、あなたが怯えたり、苦痛な表情を見せることに満足をします。そのため、モラハラ発言に無関心を貫きスルーをしてください。
もしも治療中にモラハラ症状が出ても、何も言わないこと。挑発的な発言や逆襲をするのも逆効果となってしまいます。
「モラハラしても無意味だ」と理解させるためにも、あなたは無関心に徹しましょう。
食生活の改善とストレスを溜めないようにする
モラハラをすることでストレス発散をしています。栄養不足や体調に気をつけ、疲れやストレスを溜めない生活を心がけてみましょう。
ストレスを発散できる趣味を見つけてあげることも有効です。
褒めて伸ばす
モラハラ夫は「認めてもらいたい」「褒めてもらいたい」という気持ちが非常に強い生き物です。
そのため、妻に褒められることで自尊心が満たされ、モラハラが軽減するかもしれません。
できるだけ具体的に褒めることで「また褒められたい」という心から、好循環を生めれば改善の兆しといえるでしょう。
心の病気・精神障害への理解
医学上はモラハラという病名はありませんが、精神障害の一種とされています。
長年培われてきたものが”モラハラ”という形になり、それがその人の行動様式となっています。
ことばの暴力がいけないというを認識できる判断能力が低いのと、相手を威圧する態度や振る舞いが染み付いているので、カウンセリングを受ければある程度は改善されるケースもあるものの、これをやれば必ず改善されるといった方法がないのが現状です。
モラハラ夫が変わる見込みはほぼ無し!

モラハラ夫との離婚を考えつつも「いつか夫が心を入れ替えてくれるのではないか…」と期待している気持ちがある方もいると思います。
しかし、モラハラは自覚させることすら難しいため治すのはほぼ無理です。
夫自らがモラハラを行っていることを理解して、妻への精神的負担を理解し、改善の必要性を認知しなければなりません。
さらに、モラハラにとって代わる適切なコミュニケーション方法を習得するなどの努力が必要となるでしょう。
あなたが離婚を考えるようになるまで続いてきたモラハラは、夫にとっていわば当たり前の行動になっているはず。
改善の可能性がないわけではありませんが、モラハラの改善は決して簡単なことではなく、長い時間を要することは把握しておきましょう。
モラハラ夫に関して相談できる相談先

モラハラ夫にはもちろん自覚がありませんが、モラハラを受けている妻の方も「モラハラだとは思わなかった」というケースがあります。
どのタイミングで気付けるかという問題はありますが、モラハラをなんとかしたいと思った場合の相談先を紹介いたします。
女性センター
全国の都道府県、市町村が自主的に設置している女性のための総合施設で、「女性の抱える問題」を総合的に相談することができます。
「配偶者暴力相談支援センター」に指定されている施設もあり、DVやモラハラで相談するならまずここに相談してみるのが良いでしょう。
法テラス
法テラスでは、収入・資産等が一定以下の人を対象に無料の法律相談ができます。
弁護士費用の不安がある場合でも、弁護士費用立替制度というものがあり、経済的に困っている相談者に対する法律相談援助、代理援助又は書類作成援助を行っています。
また、法テラスは全国84ヶ所に事務所を構えているため、弁護士や司法書士に相談したい場合は便利です。
さいごに
モラハラは、暴言、態度などで相手に精神的な苦痛を与える暴力行為。
DVの一種ともされており、れっきとした離婚事由に該当します。
モラハラ夫の特徴から、あなたの夫がモラハラ野郎だと分かっても、残念ながら治る見込みはほぼありません。
このまま我慢して一緒に暮らし続けるか、離婚して新しい人生をやり直すか…すぐには決められないだけに難しい問題ですよね。